アタラズモトオカラズ

石崎ひゅーい 3rd Album

「アタラズモトオカラズ」 

<disc1:CD>

  1. 溺れかけた魚
  2. 牧場で僕は迷子になって
  3. ダメ人間
  4. 敗者復活戦
  5. 傷心
  6. 沈黙
  7. サヨナラワンダー
  8. ピノとアメリ
  9. お前は恋をしたことがあるか
  10. さよなら、東京メリーゴーランド
  11. アタラズモトオカラズ
  12. 謝肉祭

PRODUCED BY AKIRA SUDOH

CO PRODUCER:HUWIE ISHIZAKI&TOMI YO


<disc2:DVD>*初回盤のみ

石崎ひゅーいTOUR「花瓶の花」東京キネマ2016.07.28

  1. 夜間飛行
  2. ファンタジックレディオ
  3. ピーナッツバター
  4. 花瓶の花

初回限定盤:CD+DVD 豪華48Pブックレット付 ESCL-4748-9 ¥4,000(TAX IN)

通常盤:CDのみ 豪華48Pブックレット付 ESCL-4750 ¥3,200(TAX IN)

EPICレコードジャパン


特報1

特報2

特報3


「グリニッジヴィレッジのシャワーキャップ」

プロデューサー 須藤晃


 アーティストの創作活動のキーワードは自由。誰にも縛られたくないと考えるのが芸術家の出発点。自由でありたいという欲求からスタートする。ものづくりなんて自由でなければ意味がない。だから才能がある人は得をするし、そうでもない人は努力する。努力して賄えることも多いけれど、賄えないことも多い。僕が出会った人たちは才能あふれる人ばかりでした。

 音楽の世界だけでも僕は何人もの天才たちとの出会いがあり、今までたくさんの作品を作りました。約40年間。僕はどちらかといえば、文学的な人間ですから、誤解を恐れずに言えば、純粋に音楽バカみたいな人とはうまくいくんですね、どういうわけか。僕は血液型でいえばAB型なので、どんな人とも合わせられるんです、実は。石崎君はA型。だから相性というものがあるとしても関係ないというか。関係性はプロデューサーと看板を背負ったアーティストとの共同作業ですから、二人三脚で進むしかないわけです。きちんとしているアーティストと大雑把なひらめき中心のプロデューサーとの組み合わせがうまくいくのかもしれない。

 何度かメディアでも言いましたが、僕が石崎君に興味を持った理由は、もちろん圧倒的な歌のうまさとか声の良さとかもあるんですが、何にせよ「母親に向かって歌いたいんです」という気持ちにやられた。彼のお母さんが亡くなった時期に僕らは出会いました。これから母親に向かって歌うという宣言を小声でしたんです、下北沢のシェルターの前の路上で。聞き逃しませんでした。それに僕はノックアウトされたんですね。本来歌う理由がある人にしか興味がない。どんなアーティストと話をしても、なぜ歌うのかということをしつこく聞くんですね、もともと僕は。それでも出会った当時、僕はあるレコード会社の副社長だったので、現場仕事をやらなくなっていました。だから石崎君がいたアストロコーストというバンドを会社でやろうと部下に言っただけでした。石崎君に伝えたアドバイスは「母親に向かって歌うんなら、バンドをやめて一人でやれ」ということだけでした。その頃から僕は昔みたいな作品作りの現場から離れたんです。少しずつは手伝いましたが、のめり込んでアルバムを作るというようなことはできない環境にいました。

 今回、彼とゆっくり話す機会があったときに、一緒にやりたいなあという思いが伝わってきた瞬間があったんですね。それで、じゃあやるか、みたいな。それが今年の夏でした。マネジメント事務所のボスから共同制作者になったわけです。そして僕は彼にこう言いました。「作り上げた後にその次の作品がベストだと言わないように渾身の力で作りたい。これが最後だと思って全力でやるよ」と。 

 まずは準備期間に3ヶ月を時間調整してこのアルバムに専念しました。何を歌うべきなのかと考え続けました。問題作を作るべきだと思いました。聴き心地の良い洗練された音は他にもたくさんあるから、レコード会社が売りようがないと悩むようなアルバムを作りたいと考えたわけです。まあ、少し大げさな言い方をするとですが。ずっとそういう気持ちでものを作ってきたのも正直事実でしたし。そして石崎君とは時々会って、僕がやりたいことを伝えるというか、逆じゃないかって言われそうですが、全くもってオールプロデュースというのはこういうことなんだということを彼にも教えたくて、一方的な考えを話し続けたんです。幸運にもあまり衝突はなくて、割と順調に制作は進み、いよいよスタジオでデモテープを二人で作り始めると、あとはスムーズでした。3年ぶりに2ndアルバム「花瓶の花」を出した直後でしたから、会社的にもしばらくはそれを売りたい時期なんですが、もう止められなかった。

 アルバムタイトルは『アタラズモトオカラズ』に決定。人生の真理なんですね、当たらずも遠からずというのは。人生の的なんて幻なんです。でも投げた球は当たりはしなくてもまあまあいいところに飛ぶんですね。生涯歌っていけよということを体と心にしみわたらせたかった。しみわたったはずです。プロデューサーの僕は放射能みたいな男ですから。目に見えないものが相手を侵食していくんです。その実感がありました、今回は。石崎ひゅーいは素晴らしかった。もうその一言です。

 歌は世につれ、世は歌につれ。歌が世間に与える影響は強大です。このアルバムが歌に飢えた人たちになにがしかの力を与えることを祈ります。

 「グリニッジヴィレッジのシャワーキャップ」という言葉、これが僕のものづくりのヒントです。言葉の持つ匂いや色や触り心地が読んだり聞いたりする人を刺激して、勝手に相手のイマジネーションと結合して世界を作り始める。つまりそれは「モンマルトルのウィンドウチャイム」でも「偕楽園の笹団子」でもなんでもいいわけです。幾つかの言葉のイメージを衝突させて、その創造物を音楽でデコレートしていく。そして完成させる。僕と石崎君はトオミヨウという強力なサポーターの力を借りて、壮大な叙情詩『アタラズモトオカラズ』を作り上げたんです。お楽しみください。


アタラズモトオカラズ / 石崎ひゅーいセルフライナーノーツ



1)溺れかけた魚(作詞:石崎ひゅーい・須藤晃 作曲:石崎ひゅーい)

 そもそも今回のアルバムを作ることになった発端は「面白い詩のイメージがある」という須藤さんの一言でした。2ndアルバム『花瓶の花』をリリースしてまだ間もない頃で、次のアルバムなんて来年以降の感じで(っていうか次のアルバムってあるんだ、みたいな)急いで作ることになるなんて考えもしなかったことでした。

今年になって【コッパミジン】というバンドスタイルのイキっぱなしライブをやり、【オツヤ】というノンPAライブを狭いクラブでやり、【ナイトミルク】というカバーライブをプラネタリウムなどでやり、誘ってもらったイベントライブはギター1本で参加したりもして全国的にかなりの本数のライブをやってるうちに「一度昔のフォークスタイルをメインにしたアルバムを作ってその形でライブでやらないか」というのが須藤さんの提案でした。「ひゅーいの言葉をみんなの心に置いてこい」って言われました。詩を届けるようなアルバムを作れということだと理解しました。作品を作るということの醍醐味を初めて味わいましたね。そしてこんな曲やってる奴はいないという確信が生まれた作品です。



2)牧場で僕は迷子になって(作詞・作曲:石崎ひゅーい)

 2ndアルバム制作時に作った曲で、今回ブラッシュアップしました。目が覚めてなんとなく呟いたみたいな世界観が好きで、そういった曲がギターを持つと自然にできてしまうのだけれど、別に胸を張って言うべき主張もなく、自分自身のいたらなさを本当にツィートしただけみたいな曲。目が覚めたばかりだから、夢の中から現実に入り込んでくるようなある種のファンタジー感が好き。夢想の世界のようでリアルなところが自分らしい作品だと思います。



3)ダメ人間(作詞・作曲:石崎ひゅーい)

 以前ライブでやっていた曲をちゃんとレコーディングして、子供たちのコーラスも入れました。自分がダメ人間なんだと言えば言うほど力が出てくる不思議な曲になりました。ミュージシャンというものはそれほど賢くもないし計算高くもないし単純でただ音楽が好きなだけからスタートしているわけで、だから一般人としてはとてもダメなところが多い。でも「あれ」だけは忘れられない。それは自分を救ってきた「歌」なんだ、ということが言いたかったんですが。ある意味で僕のテーマ曲です。世の中にダメじゃない人間なんているわけない。



4)敗者復活戦(作詞:石崎ひゅーい・須藤晃 作曲:石崎ひゅーい)

 これはスタジオで「さあ〜1曲作るぞ」と須藤さんに言われて10分ほどで出来上がった曲。オリンピックを見ていて、敗者復活戦で勝ち上がれなかった人たちのことを考えていたら詩のイメージが出来ました。最初から最後まで誰かがハモったらいいぞということで、須藤さんがプロデュースしているアーティスト、MINMIさんに依頼しました。勝敗というのは相手があって生まれること。一人じゃ勝ちも負けもないってこと、です。自分一人じゃ絶対に作れなかったタイプの曲です。



5)傷心(作詞・作曲:大友裕子)

 自分の好きな日本の名曲をカバーするナイトミルクというインターネットラジオとライブをやっていると、実に優れた曲が多いことに気づきました。この曲は教えてもらって聞いた時にすぐに気に入り、デモテープを作ってみたら歌いたい曲になったので今回カバーで収録することにしました。トオミさんのアレンジがものすごい。この曲をずっと誰かに歌ってもらいたかったんだと須藤さんがしきりに言っていました。僕でよかった、です。



6)沈黙(作詞:須藤晃 作曲:浅田信一)

 須藤さんが以前プロデュースした作品の中から1曲何かを歌おうということになり、浅田さんのこの曲とジェホの「DOWN」のどちらかに絞り込み、この曲にしました。もともと突き刺さるような言葉の速射砲が自分のスタイルだし、その原点がずっと聞いてきた須藤晃的世界観なので、この曲をカバーできたこともラッキーでした。曲調も新鮮でした。情報が多すぎるので、不必要な情報をカットするようなフィルターを目と耳につけたい。意識的にスルーするようにしよう。ミザルキカザルイワザル。



7)サヨナラワンダー(作詞・作曲:石崎ひゅーい)

 自分がもともと組んでいたアストロコーストの曲。バンドスタイルで出したものをバラードでやらないかと言われてトライしました。意外とすんなり抵抗もなく歌えたのでかえって驚きました。こんないい曲だったんだ、みたいな。「ほしのふるまち」という映画のオープニングでアストロバージョンは使われて、その時の主人公は18だったけれど、今回は作った時の自分の年齢に戻して26って歌詞で歌っています。他にも少し詩を変えました。若干大人になりました。



8)ピノとアメリ(作詞:石崎ひゅーい 作曲:トオミヨウ)

 2ndアルバム『花瓶の花』後に出したシングル。『NARUTO』のエンディングテーマ。「今年は攻めるぞ」なんて漠然と力んでいた時に、指名されて渾身の思いで書いた曲。この時にはすでにこの3rdアルバムの構想があったので、全体的な詩の世界は共通しています。



9)お前は恋をしたことがあるか(ひゅーいソロヴァージョン)(作詞・作曲:石崎ひゅーい)

 『ピノとアメリ』のカップリングとして、尾崎世界観くんとの共演テイクを発表しましたが、これは全く別のアレンジでのピアノとストリングスバージョン。須藤さんのレコーディングスタイルは独特で、全体を録音している時に歌ったテイクはほとんど本番になるので、ほぼ一回しか歌わないんですね。これもそうです。トオミさんのピアノとストリングスと同時録音です。



10)さよなら、東京メリーゴーランド(作詞・作曲:石崎ひゅーい)

 スペースシャワーのアプリで読むことができた小説があって、それを書き続けて、その小説に基づいて書いた曲。そして今回のアルバムのもう一つの核になっている曲です。実はアルバムにはいろんな人が登場しているんですが、ほぼ映画のように同じ登場人分を追いかけていて、それはこの曲と書いた小説がモチーフになっています。



11)アタラズモトオカラズ(作詞:石崎ひゅーい・須藤晃 作曲:トオミヨウ)

 何か新しいことをやりたくて、須藤さんの提案で、トオミさんと須藤さんと僕がそれぞれが勝手にこのアルバムのテーマ曲を作るために材料を持ち寄り、それを僕が仕上げた感じの曲。スリリングでした。特に相談することもなく、反応するままに絵を描いたという感じで、とんでもない曲になってしまって。本当はこの倍ぐらいの長さになりそうだったんだけれど、それじゃあんまりにも長いということで整理しました、でもこの長さになってしまって。自分の進むべき方向を指し示してくれた怪物のような作品です。文学的で音楽的で映像的で。このヨーロッパ的でアメリカ的でアジア的な混沌とした感じが、石崎ひゅーいの世界観です。トオミさんのピアノとアレンジがたまらないです。



12)謝肉祭(作詞:石崎ひゅーい・須藤晃 作曲:石崎ひゅーい)

 20年後まで歌い続けている歌を作りたくて、自分がなぜ歌うのかを歌にしました。自分にとっての今の狭い生活空間や時代の閉塞感や日本人であるという誇りや困惑や不安や人間関係の複雑さへのこだわりや、すべてのコンプレックスを余すことなく書いたら10分を超える曲なりました。これは石崎ひゅーいの国歌のようなものであり校歌のようなものであり子守唄であり代表曲だと思う。この歌を歌えなくなったら歌うことをやめることにします。万歳。


 全体を通して今回のアルバムを須藤さんにプロデュースしてもらったことで気づいたことが山のようにあります。ニコニコしながらも全くと言っていいほど、独断的で、こうするからという瞬時の決断と判断とで全体がものすごいエネルギーで進んでいく。確信があるんですね、あらゆることに。僕の意見なんて、どう思うかいいなよと言いながら結局関係ない。カバーの撮影も事務所に行ったら、須藤さんたちスタッフが車に乗り込んで「行くぞ」みたいな。あっという間に撮影。衣装やコンセプトも決まっていて、全部イメージやビジョンが明確にある。だから誰も迷わないし不安もない。だからほとんど滑るように物事が進行する。このパワーが日本の音楽シーンを作ってきた人のパワーなんだと思いました。6、7年前に横浜のライブハウスで声をかけられて。ようやく一緒に作品作りができた感激と出来上がった作品への愛着と感動で、僕はほとんど毎日ニヤニヤしています。年が明けたら、このアルバムを引っさげてライブだあ。